経営者の財務状況で重要なポイント ~創業融資の審査ポイント(4)~

 創業融資の審査ポイント(1)でお伝えしたとおり、創業融資の審査ポイントは「事業の収支見込み」「経営者の能力」「経営者の財務状況」の3点に大別できます。ここではそのうち「経営者の財務状況」について説明します。

 金融機関が経営者の財務状況を審査の対象にするのには概ね2つの理由があります。

 一つ目は、起業後の資金的なゆとりのためです。起業はなかなか利益が上がらずに事業の資金繰りは厳しくなります。いざというときには事業に経営者自らが資金を補填できる状態であれば、事業を継続する能力が高く評価されます。逆に債務の支払いが多いような状態ですと、事業から多くの利益が生じる必要があり、事業を継続する能力について危ぶまれます。

 二つ目は、債務や公共料金などの支払の状況を確認することで、借入した債務を期日にしっかりと返済するしっかりした人であるかを審査します。金融機関は会社の財務状況を逐一確認しているわけにはいかないので、毎月の支払いを滞りなくすることがその会社の状況を確認できる重要な手掛かりになります。支払いに毎月遅れるような人ですと、金融機関としては取引がしづらい人とみなしますし、やはり毎月しっかりと期日までに支払いをする人はしっかりとしていて事業の運営もできる人だ、とみています。

 そこで「経営者の財務状況」についての主な審査ポイント以下のとおりです。

①資産がどの程度か

 資産が多い状態のほうが、事業が軌道にのるまでの期間を乗り越えやすくなるので、事業の継続能力が高いとみなされます。不動産や金融資産などがあれば積極的に開示することで希望通りの融資条件を引き出す期待値があがります。

 またその他の審査ポイントに不安がある場合などには、同意をえられた同居親族の資産状況などを開示するのも有効に働く場合があります。

②負債がどの程度か

 これは①とは逆で、負債などの支払いが沢山ある場合には、事業を早く軌道にのせて、その利益から負債を返済しなければならないとみなされますので、多額の支払いがある場合にはマイナスの評価になりやすくなります。

 よくある負債の支払いは、過去の借入金、住宅ローン、カードローンです。

 ただし、後述しますが、毎月の支払いがしっかりと行われていて、かつ事業の資金繰りを圧迫するほどに多額とみなされなければ気にしすぎることはありません。特に住宅ローンなどは資産価値のあるものに対する負債ですので、マイナスの評価になりづらくなっています。

 また負債を隠したほうがいいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、金融機関は融資の審査にあたり、「個人信用情報」を取得します。

 「個人信用情報」とは、銀行、信用金庫、クレジットカード会社などが加盟して、個人の利用状況や支払い状況を情報として蓄積するシステムです。CICなどが代表的な機関です。

 その機関に記録されている情報については隠匿することはできません。安易に隠すことは、「この人は信用できない。」という印象を与えるだけなのでおすすめできません。

③支払いは期日通りに行われているか

 公共料金、借入金、税金などの支払いを滞りなく、支払っているかが確認されます。これは創業者が信用できる人物であるかが審査されています。

 もしも支払いに遅れがある、あるいは不払いになっているようなものがあると、先述した「個人信用情報」に記録されている可能性があります。

 個人信用情報は本人であればCICなどの機関から取得をすることができます。気になることがあれば、まずは一度、ご自分の信用情報を調べてみてみることをおすすめします。