税金

個人が事業を開始するときに必要な届出は?

個人で事業を始めようと考えているけれど、提出する書類がわからないという方も多いのではないでしょうか? 今回は、個人で事業を始めるときに必要な届出について詳しくみていこうと思います.

個人で事業を始める場合に必要な届出(共通)

まず、事業を開始する場合、「開業届」と「事業開始等申請書」の提出が必要です。

税務署へ提出する「開業届」と各都道府県・市区町村へ提出する「事業開始等申請書」は、事業を開始する個人全員が提出する必要があります。

開業届

一般的に「開業届」と言われていますが、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。

開業届は「開業から1ヵ月以内」が提出期限となりますが、個人の事業の場合は、明確な開業日がわからない場合も多くあると思います。法律上も明確な開業日の定義はないため、個人の開業日についてはホームページを作成した日や実際に取引を始めた日、事業にとりかかり始めた日など自分で自由に決めることができます。

また、開業届に開業日を記載する欄がありますが、この開業日は過去の日付でも今後開業する予定で未来の日付を書いても問題ありません。

事業開始等申請書

税務署へ提出する開業届の他に、「事業開始等申請書」をそれぞれの都道府県税事務所および市区町村へ提出します。

都道府県税事務所および市区町村へ提出する事業開始届は、都道府県ごとに様式や提出期限が違っています。

例えば、東京都の場合は「事業開始等申告書」という名称で提出期限は事業開始の日から15日以内、神奈川県の場合は「個人事業開業・休業・廃業届出書」という名称で提出期限は事業を開始してから1月以内となっています。

 都道府県税事務所へ事業開始届を提出する場合には、それぞれの都道府県のホームページなどで書式や提出期限などを確認するようにしましょう。

個人の場合は、基本的に税務署へ「開業届」、都道府県税事務所へ「事業開始等申請書」をそれぞれ提出すれば、開業に関する最低限の届出は完了です。

どちらの届出も作成・書式や書き方の説明などは国税庁や各都道府県税事務所のホームページに掲載されています。

 また、どちらの届出も提出をしなかった場合の罰則はありませんが、税金の優遇制度が受けられなくなるなどのデメリットがあります。

開業届は明確な提出期限がなく、提出しなかった場合の罰則などもないことから、事業の売上が安定し、継続的に事業を続けていく見通しが立ってから届出を出しても問題ありません。

 ただし、届出を提出していなくても、所得(事業の利益)がある場合は確定申告が必要な場合がありますのでご注意ください。

個人で事業を始める場合に必要な届出(必要な人のみ)

個人で事業を開始した場合、「開業届」と「事業開始等申請書」を提出すれば開業に必要な手続きは完了です。しかし、事業の利益が出ていて税金の優遇制度を活用したい場合や配偶者や親族に給与を支給している場合などそれぞれの事業の状況によっては開業届以外にも提出が必要な届出があります。

青色申告の承認申請書

青色申告の承認を受けたい場合に提出します。

開業届を提出していても、青色申告承認申請書を提出していない場合は、白色申告で確定申告を行います。

 この青色申告承認申請書を提出し、期限内に確定申告を行うことによって青色特別控除として最大55万円(電子申告の場合は65万円)の所得控除が受けられます。

この青色申告特別控除を受けるために、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出する場合が多いです。

申請書は国税庁のホームページからダウンロードでき、提出期限は、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までですが、その年の1月16日以後に開業をした場合は、開業した日から2カ月以内に提出をします。

青色専従者給与に関する届出・変更届出書

青色申告をしている事業者が配偶者や親族へ支払った給与を経費として計上したい場合に提出します。青色申告をしている事業者は、この届出を提出しないと配偶者や親族へ支払った給与を経費として計上することはできません。

 白色申告の場合、専従者へ支払った給与は必要経費として計上できる金額に上限があり、配偶者は86万円、配偶者以外の専従者は50万円までを必要経費に計上できます。しかし、この青色専従者給与を提出することで、専従者へ支払った給与の全額を必要経費へ計上することができます。こちらも、青色特別控除と同様に大きな節税効果が期待できます。

青色専従者給与に関する届出は、基本的に一度提出してしまえば、その後は毎年提出する必要はありませんが、届出に記載した給与の金額以上を専従者給与として支給した場合や新しく専従者給与を支払う人が増えた場合などは、再度提出が必要となります。

 提出期限は、青色申告承認申請書の期限と同じく専従者給与を経費として計上しようとする年の3月15日までです。しかし、その年の1月16日以後に開業した場合や年の途中から専従者として給与を支給した場合には、開業した日・専従者を雇い始めた日から2カ月以内が提出期限となります。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

給与や退職手当の支給時に徴収した(給与から天引きした)源泉所得税、税理士等へ報酬を支払うときに徴収した源泉所得税の納付期限を変更する届出です。

原則として、源泉所得税は徴収した月の翌月10日までが納付の期限となりますが、毎月源泉所得税の計算と納付を行うのは大変です。そこで、従業員の人数が常時10人未満である場合は源泉所得税の納期の特例制度が認められています。

この届出を提出することにより源泉所得税の納付が半年に1回でよくなります。

(申請書の提出によって1月~6月分は7月10日まで、7月~12月分は翌年1月20日までが源泉所得税の納付期限となります。)

源泉所得税の納期の特例の届出を提出することによって、給与や税理士等への報酬を支払った時の事務作業の負担を軽減することができます。

こちらの申請書も国税庁のホームページから書式をダウンロードでき、提出期限などはありません。(原則提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。)

給与や税理士への報酬の支払いがある場合は、他の申請書と同様に開業届と一緒に提出する場合が多いです。

これらの届出は、開業するときに必ず提出が必要な書類ではありません。

しかし、実際は開業するときに開業届と一緒に提出する場合が多いです。

 これらの届出を提出しない場合の罰則などはありませんが、届出を提出していない場合は青色申告特別控除が受けられなかったり、専従者給与が必要経費に算入できなかったりと税金の優遇制度が受けられなくなってしまいます。

 それぞれ必要な届出を忘れずに提出し、事業の状況に応じてより効果的な節税対策をしていきましょう。(また、業種によって必要な届出が変わってきますのでご注意ください。)

今回は、個人で事業を開業するときに必要な届出ついてみていきました。

個人の場合は、開業届と事業開始等申請書を提出し、その他の届出についてはそれぞれの事業の状況によって必要に応じて提出することになります。

開業時から届出の提出をしっかりと行うことで、事業所得の大きな節税効果が期待できます。

 個人で事業を始めようとしている方、自分の事業の売上や収益がある程度安定してきたから本格的に事業を営んでいきたい方はぜひ開業前に税務署や会計事務所などに相談してみてはいかがでしょうか。 (今回の記事は2021年11月時点の情報をもとに作成をしております。)

個人が開業するメリット・デメリット

以前の記事では、個人で事業を開業するときに必要な届出についてみていきました。

事業を開業するときに提出する開業届や事業開始等申請書などは、明確な提出期限がなく、届出を提出するタイミングがわからないという場合も多いと思われます。

そこで、今回は個人が開業届を提出して事業を始めた場合のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきたいと思います。

開業届を提出して開業をするメリット

①青色申告をすることができ、青色申告特別控除がうけられる

開業届を提出することによって、青色申告承認申請書も提出することができるようになります。青色申告では、複式簿記で作成した決算書等を期限内に提出することによって最高55万円(電子申告の場合は65万円)の所得控除を受けられます。 白色申告の場合は、このような所得控除はありません。

また、開業届を提出しないと、青色申告特別控除申請書の提出はできませんので、青色申告特別控除を受けるためには、開業届と青色申告特別控除申請書の両方を提出する必要があります。(実際には、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出する場合が多いです。)

②青色専従者給与を経費として計上できる

白色申告の場合は、専従者給与のうち配偶者は86万円、その他の専従者は50万円までしか必要経費として計上できませんが、青色専従者給与に関する届出・変更届出書を提出することで、配偶者や親族に支払った青色専従者給与を全額必要経費として計上できます。

青色専従者給与に関する届出を提出するためには、開業届と青色申告承認申請書の提出が必要となります。

③損金の繰越しができる

事業で損失が出た場合にその損失の金額を翌年以降3年間繰越すことができます。つまり、1年目の利益がマイナスで2年目の利益がプラスになった場合は、2年目の利益の金額から1年目の損失の金額を控除して所得税を計算することができます。

白色申告の場合は、損失がでても翌年以降への繰越しはできません。

開業届を提出して開業をするデメリット

①失業保険を受けられない可能性がある

失業保険とは、基本的に「再就職を目指している人」が対象となっています。会社で勤めていた時に開業届を提出し事業を始め、その後、会社を辞めた場合は失業保険の給付の対象とはなりません。

 また、失業保険の受給中に開業届を提出して事業を開始した場合も、開業届を提出した時点で失業保険の対象ではなくなり(再就職したとみなされる)、失業保険の給付が終了することが多いので注意が必要です。

 ただし、開業届を提出して事業を開始していても、失業保険の受給の対象となる場合があります。自分が失業保険を受けられるかを知りたい場合は、お住いのハローワークへ確認してみると良いでしょう。

②帳簿の形式が複雑になる

開業届と同時に青色申告特別控除申請書も提出する場合も多いかと思われます。白色申告の場合は単式簿記での記帳が認められていましたが、青色申告は、複式簿記による帳簿の作成が義務づけられるため、会計帳簿の作成が複雑になります。

開業届と青色申告承認申請書を提出し事業を開始することによって、青色申告ができるようになり、青色申告特別控除が受けられたり、損失の繰越しができたりするようなります。他にも届出を提出することで、様々な税金の優遇制度が受けられるようになります。しかし、大きなメリットもある一方で、失業保険が受けられない、帳簿の作成が複雑になるなどのデメリットもあります。

 開業届を提出するかどうかや開業届を出すタイミングについては個人や事業の状況をみて判断することが重要となってきます。

 また、どの届出を提出すればよいかわからない、自分の事業のより効果的な節税方法が知りたいという場合には、開業届を提出する前に会計事務所などで相談してみると良いのではないでしょうか? (今回の記事は2021年11月時点の情報をもとに作成をしております。)

住宅ローン控除制度と事業用経費について

以前、住宅ローン控除について解説しましたが、今回は住宅ローン控除と個人事業主の事業用の経費との関係を見ていきたいと思います。

住宅ローンを借り入れると、住宅ローン控除を受けることができます。

住宅の取得時期や住宅の種類によって期間や上限などは変わってきますが、今回は一般的な住宅の取得で住宅ローン控除の適用期間が10年以内の場合で考えていきます。

住宅ローン控除は、住宅ローン控除の適用を受ける年の住宅ローンの年末残高×1%(上限40万円)の減税を受けられる制度です。

住宅ローンの年末残高が3,000万円の場合は、3,000万円×1%=30万円の減税を受けられます。

基礎控除や配偶者控除、生命保険料控除などは所得控除といわれ、所得金額から控除額を引いて、それぞれの所得税率で所得税を計算しますが、住宅ローン控除は、それぞれの所得税率で計算した所得税から控除額を引くことができます。

そのため、住宅ローン控除の減税の効果は、配偶者控除や保険料控除などの所得控除よりも大きいものになります。

個人事業主は毎年、確定申告で住宅ローン控除の申告をします。確定申告により、その年の納めるべき所得税を計算し、納めるべき所得税が住宅ローンの控除額より少ない場合は住宅ローンの控除の余りの金額が翌年の住民税から減額(上限13万6,500円)されます。

(納めるべき所得税が住宅ローンの控除額より多い場合は、住宅ローン控除額が所得税から減額されるため住民税の減額はありません)

 なお、所得税と住民税を引いても余る住宅ローン控除額の部分は消滅します。 消費税や事業税など他の税金の減額や控除の余りの部分を翌年に繰り越したりはできません

個人事業主の方は住宅の一部を事業で使っていて、住宅ローンの返済額のうち一定割合を経費として計上している場合も多いと思います。 住宅ローン控除は居住用と事業用の割合によって受けられる控除の金額が変わってきます。

居住割合が90%以上の場合

住宅の90%以上が居住用(事業用10%未満)の場合は、住宅ローン控除を全額受けることができます。

居住割合が50%以上~90%未満の場合

住宅の50%以上~90%未満が居住用(事業用が10%以上~50%未満)の場合は、「住宅ローン控除額×住宅用部分の割合」で計算した金額が住宅ローン控除額になります。

住宅ローンの控除額が30万円で住宅を事業用40%・居住用60%で使用している場合には、「30万円×60%(居住用割合)=18万円」の税額控除が受けられます。

居住割合が50%未満の場合

住宅ローン控除とは、あくまでも「居住用家屋」を取得したときの借入金に認められている優遇制度になります。そのため、住宅の50%未満が居住用(事業用が50%以上)の場合は住宅ローン控除の適用外となります。

個人事業主の方が住宅ローン控除の適用を受けるにあたって、居住用と事業用をどのくらいの割合にしたらもっとも有利かは、状況(住宅ローンの借入額や事業の所得金額等)によって変わってきますのでご注意ください。

住宅ローン控除は、原則として住宅ローンの年末残高の1%が税額控除されるため、所得税や住民税の節税に大いに役立ちます。

 しかし、所得税や住民税以外の税金を控除することはできず、また、住宅ローン控除の控除額が所得税や住民税と相殺しても余ってしまった場合は、その余った控除額分は翌年に繰り越すことがでず消滅してしまいます。

 そのため、住宅ローン控除の適用を受ける場合は、個人事業主の方はできるだけ住宅ローン控除の控除額いっぱいまで税額の控除を受けられるように、事業の利益(所得)をある程度残しておいた方より住宅ローン控除を有効に活用できるでしょう。

そこで、ポイントとなってくるのが繰延資産である開業費です。

住宅ローン控除の適用を受けていて、これから個人事業主として開業しようという場合には、税務上、期限の定めがなく繰り延べが認められている開業費をしっかりと開業時に計上するようにしましょう。

 そして、住宅ローン控除の適用期間は、住宅ローン控除で所得税や住民税の減額をして、住宅ローン控除の適用期間がすぎて事業の利益が出てくるようになったら繰延資産に計上している開業費を経費として計上して利益(所得)を減らしていくことによってより効果的に節税をすることができます。

住宅ローン控除で所得税や住民税の減額を受けられるから、今年の事業の利益をできるだけ多く出しておきたいという場合の固定資産の償却についても考えてみます。

個人事業主(青色申告者)を含む中小企業は、「少額減価償却資産の特例」が認められています。

 少額減価償却資産の特例とは、簡単にいうと年間で合計300万円まで、1つあたり30万円未満の資産(パソコンや自動車など)を購入した場合に、その資産を購入した年に全額経費として計上するかもしくは通常の法定耐用年数で毎年均等額を減価償却費として計上していくか選べる制度のことです。

中小企業の場合は、少額減価償却資産の特例を使って30万円未満の資産は購入した年に全額経費として計上してしまうことも多いです。

 しかし、住宅ローン控除の控除額の上限まで使いたいなどの理由で、できるだけ今年の利益(所得)を残しておきたい場合には、30万円未満の資産を法定耐用年数に基づいて分割して経費として計上していくこともできます。

今回は、個人事業主の住宅ローン控除の事業割合に応じた控除額や住宅ローン控除と繰延資産との関係、住宅ローン控除と固定資産の償却との関係などを見ていきました。

住宅ローン控除税制は、とても頻繁に改正があり制度自体も非常に複雑になっています。また、事業の開業時の費用の計上についても色々と難しい部分があるかもしれません。

しかし、住宅ローン控除制度や開業費などの繰延資産を上手に活用すればより大きな節税効果が期待できます。

 住宅ローン控除が難しい、住宅ローン控除を受けていてこれから事業を開業しようと思っているけれど会計はよくわからないといった場合には税務署や会計事務所などに相談してみるとよいでしょう。

 税金の優遇制度や所得控除、税法や会計の特例などを有効に活用して、より効率的に節税をしていきましょう。

(今回の記事は2021年10月時点の情報を基に作成しております。)

住宅ローン控除について

住宅の購入やリフォームのために住宅ローンを借りたときに受けられる「住宅ローン控除」ですが、正式には「住宅借入金当特別控除」と言われています。ここでは、わかりやすく「住宅ローン控除」と呼んでいきます。住宅ローン控除はとても頻繁に制度が変更され、住宅の購入時期によって控除の期間や控除できる金額が変わってくるので注意が必要です。

今回は令和3年の住宅ローン控除税制を基準にポイントや注意点を見ていきたいと思います。

なお、今回の住宅ローン控除の詳細は令和3年10月時点の税制をもとにまとめています。

住宅ローン控除のポイント

① 住宅の購入者(住宅ローンの名義人)の合計所得金額が3,000万円以下であること

住宅ローン控除の適用を受けようとする年の合計所得金額が3,000万円以下の人が住宅ローン控除の対象となります。

合計所得金額とは、事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得等々「その年に稼いだ利益(所得金額)の合計」のことをいいます。

そのため、副業をしている会社員や事業をしながら賃貸不動産も所有しているなど複数の所得がある場合は注意が必要です。

② 本年12月31日時点で居住していること

住宅ローン控除を受ける年の12月31日時点で住宅ローンを借りている住宅に居住している必要があります。年の途中で住宅を売却した場合は、その年は住宅ローン控除の適用を受けられません。

③ 住宅を取得した日から6カ月以内に居住していること

一般の住宅(新築、中古住宅の購入等)の場合、住宅を取得して6カ月以内に住宅ローンの対象となる家屋に居住している必要があります。

 ただし、コロナの影響で住宅の取得日から6カ月以内に居住できなかった場合でも証明書の添付によって住宅ローン控除を受けられる可能性があるので、そのような場合には税務署に確認してみると良いでしょう。

④ 住宅ローンの借入期間が10年以上であること

住宅ローンの借入期間が10年以上であることが必要です。

繰り上げ返済をして残りの返済期間が10年未満になっても、借入期間が当初の契約から10年以上であれば住宅ローン控除の適用を受けられます。

ただし、繰り上げ返済により借入期間が契約当初から10年未満になるときは住宅ローン控除の適用外となりますのでご注意ください。

⑤ 住宅ローン控除は納めた所得税が戻ってくるもしくは納めるべき住民税が減額される

確定申告で住宅ローンの申告をするとお金が戻ってくるというイメージがありますが、会社員の方は毎月の給与から所得税を納めていて、その納めた所得税の金額を上限としてお金が戻ってきます。会社員の方でも納めた所得税がなければ、戻ってくる税金はありませんので、確定申告で還付を受けられません。

(確定申告で所得税の還付を受けられなくても、住民税の控除は受けられるため、住民税を納めている人は、所得税の還付を受けられなくても確定申告をするようにしましょう)

 また、住宅ローン控除の控除額を所得税で引ききれなかった場合には、翌年の住民税で控除が受けられ翌年納めるべき住民税が減額されます。

住宅ローン控除の控除額

住宅ローンの控除額は取得した住宅の種類や住宅を購入した時期によって異なってきます。

ここでは、平成26年4月1日以降に一般の住宅の取得等により住宅ローン控除を受ける場合の上限額をみていきます。(住宅ローン控除適用1年目~10年目の場合)

基本的に、「住宅ローンの年末残高×1%」もしくは、「上限額40万円」のどちらか小さい方の金額になります。

つまり、住宅ローンの年末残高が4,000万円超の場合は「40万円」、住宅ローンの年末残高が4,000万円以下の場合は「住宅ローンの年末残高×1%」が控除される金額となります。

住宅ローン控除ができる期間

消費税が10%で令和1年10月1日以降に居住を開始した場合は、13年間住宅ローン控除の適用を受けることができます。

(消費税が10%以外で令和1年9月30日以前に居住している住宅については控除期間が10年間となります。)

住宅ローン控除の申告方法と必要書類

住宅ローン控除を受ける初年度は自分で確定申告を行う必要があります。

会社員の場合、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除の申告をすることができます。

① 住宅ローン控除初年度

(1)確定申告書(A・B)

確定申告書はAとBの2種類がありますが、給与所得のみの方(会社員)は

確定申告書A、個人事業主の方は確定申告書Bで申告を行います。

(2)住宅借入金特特別控除額の計算書(税務署や国税庁のHPから入手できます)

(3)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関が発行)

(4)土地・建物の登記事項証明書(法務局で直接申請もしくはオンラインで申請できます)

(5)源泉徴収票(会社員の方)

(6)売買契約書・請負契約書 確定申告の期限は、控除を受ける年の翌年3月15日までとなります。

②住宅ローン控除2年目以降(会社で年末調整を行う場合)

住宅ローン控除を受ける本人が務めている会社へ書類を提出することにより住宅ローン控除を受けられます。

(1)年末調整のための住宅借入等特別控除証明書(税務署長が発行)

(2)住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関が発行)

住宅ローン控除は制度の仕組みが複雑で税制改正も頻繁に行われるため、難しく感じられるかもしれませんが、会社員の方は2年目以降の住宅ローン控除を年末調整で申告できます。(個人事業主の方は年末調整がないため、毎年確定申告で住宅ローン控除を申告します。)

また、住宅ローン控除は控除される金額が高額になる場合が多いです。 住宅ローン控除の適用を受ける場合は、必ず忘れずに申告するようにしましょう。

償却資産税の取扱い

事業を営んでいると、個人の場合には所得税、法人の場合に法人税、そのほかにも消費税や源泉所得税、固定資産税など様々な税金の支払いがあります。

その中で償却資産税という税金をご存じでしょうか?

あまり馴染みのない税金かもしれませんが、償却資産税とは固定資産税の一種で個人事業主や法人が一定の固定資産を所有しているときにかかる地方税です。

今回は償却資産税の対象となる資産やその納付時期、申告方法などを見ていきたいと思います。(償却資産税とは、地方税のため各市区町村により詳細が異なりますが、今回は東京都23区の場合をみていきたいと思います。)

償却資産税の対象となる資産

償却資産税の対象となる資産とは、土地、家屋及び自動車等以外の事業用有形固定資産をいいます。ソフトウェアなどの無形固定資産は含まれません。

基本的には、1つあたりの取得価格が10万円以上で耐用年数が1年以上の有形固定資産が対象となります。

ただし、1つあたりの取得価格が10万円以上20万円未満の資産を一括償却資産として計上した場合には、その計上した資産は償却資産税の対象にはなりません。

(税務上、取得価格が30万円未満で少額減価償却資産として計上した場合は、その資産は償却資産税の対象となるので注意が必要です。)

償却資産税の対象となる資産の具体例

法人や個人事業主が事業のために所有している有形固定資産が償却資産税の対象となるため数多くの資産が対象となりますが、その中でも比較的所有している場合が多いものも具体的に見ていきたいと思います。

パソコン、コピー機、エアコン、調理器具、暖房器具、洗濯設備、音響設備、陳列棚等(自動車は自動車税の対象となるため、償却資産税の対象には含まれません。)

 また、実際に使用していな未稼働の資産や遊休中の資産であっても、賦課期日(1月1日)において事業の用に供することができる状態にあるものは償却資産税の対象となります。

償却資産税の納付の対象となる者

法人または個人事業主で課税標準額の合計が150万円以上の場合には償却資産税の納付義務が発生します。課税標準額の合計が150万円未満の場合は納付の必要はありません。

また、償却資産税の課税標準額の判定は市町村ごとに行うため〇〇市で100万円、××市で100万円とそれぞれの市区町村で課税標準額が150万円未満の場合も償却資産税はかかりません。

償却資産税の申告時期と納付方法

毎年1月31日までに、同年1月1日時点で保有している資産を各都道府県へ申告します。そして、申告及び調査によって市区町村側で償却資産課税台帳が作成されます。この時に、償却資産課税台帳に不服がある場合は審議請求ができます。その後、同年6月ごろに税額が算出された納税通知書が送られてきます。

東京都では通常6月、9月、12月、翌年2月の4回が納期限となります。

償却資産税は法人税や所得税、消費税などのように納付する側(法人や個人事業主)が税額を計算するのではなく、市区町村側で納付額の計算が行われます。

償却資産税の注意点

いくつか償却資産税を申告する場合の注意点をみていきます。
①資産の課税標準額は税込計理の場合は税込み価格、税抜計理の場合は税抜価格となる。
②償却資産税は市町村ごとの申告・納付となるため複数の市町村に営業所や事務所がある場合は各市町村で申告・納付をする必要がある。

市区町村が作成する償却資産課税台帳に不服がある場合は審議請求ができるが、審議請求には期限があり、不服がある場合には、「その処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内」に審議請求をしなければならない。

今回は東京都23区の場合をみていきましたが、償却資産税は都道府県ごとの申告になりますので、実際に償却資産税について確認するときには、自分の申告する市区町村のホームページ等で確認するようにしましょう。

これまで、償却資産税の対象、申告から納付までの流れや償却資産税の注意点などについてみてきました。償却資産税は法人税や所得税、消費税などのように申告書を作成し納付税額を計算する必要はありませんが、保有している資産を報告するときに税込計理か税抜計理かによって申告する取得価格(課税標準額)が異なってきたり、償却資産課税台帳の不服の申出に期限があったりと、ほかの税とは違う注意点があります。 償却資産税についてよくわからないという場合は専門家に聞いてみてはいかがでしょうか

会社員の副業と確定申告

近年、企業での副業解禁やコロナウィルスの影響による在宅時間の増加などで会社員の方でも副業を行っている人が増えているといわれています。

フードデリバリーの配達やアプリ・ネットショップなどでの商品の売買やスキルの提供、暗号通貨の売買など様々な種類の副業があり、会社に勤めながらでも副業で収入を得られている方も多いのではないでしょうか?

会社員の方の場合、給与の所得税の計算は基本的に会社側が年末調整で行うため、給与以外の所得がない場合には原則として個人で確定申告を行う必要はありません。

しかし、副業の収入がある場合には確定申告が必要となってくる可能性があります。

今回は会社員が副業で収入を得たときに、確定申告が必要となる場合について見ていきたいと思います。

所得税法では、会社員が副業により収入を得た場合、給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える ときは確定申告が必要であると定めています。

ここでポイントとなってくるのは「所得金額」と「合計額が20万円を超える」場合ということです。

所得金額とは収入金額から必要経費等を引いた金額のことをいいます。収入として入ってきた金額とは異なりますので、注意が必要です。

また、20万円を超える金額というのは、20万円ちょうどの場合は含まれません。

つまり、副業で得た収入の金額から必要経費等を引いた所得金額の合計が20万円だった場合は確定申告の必要はありません。

必要経費等とは、副業で使うパソコンやインターネットなどの通信費(ただし、副業で個人の携帯やパソコンなどを使っている場合には個人での使用分と副業での使用分を案分する必要があります)、商品の仕入れ代金や副業のために使った切手代、文房具などの消耗品費などをいいます。また、副業のための事務所がある場合はその家賃、レンタルスペースなどを利用した場合はその利用料なども必要経費として認められます。

国税庁のホームページによると副業による収入として主に以下のような所得が挙げられます。

1 衣服・雑貨・家電などの資産の売却による所得

2 自家用車などの貸付けによる所得

3 ホームページの作成やベビーシッターなどの役務の提供による所得

4 暗号通貨の売却等による所得

5 競馬などの公営競技の払戻金による所得

上記の所得を含め年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要です。医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)などの適用を受ける場合は、20万円以下の所得も含めて確定申告を行います。

これら1~5のような収入の合計の所得金額が20万円を超える場合には確定申告が必要となります。また、1~5以外でも副業としての収入がある場合には副収入による所得として扱われます。

複数の副業を行っており一つ一つの所得金額が少額であった場合でも、副業の合計所得金額が20万円を超える場合には確定申告が必要です。

副業を行う場合には、確定申告をスムーズに行うためにも収入金額と収入を得るためにかかった経費を記録しておくようにしましょう。

記録には日付と金額、内容、取引相手などを記入しておきます。書式に決まりはないので、エクセルやノートなど自分がやりやすい方法でまとめておきましょう。また、商品の仕入れや副業に必要な機材などを購入した場合にはその購入した時の レシートや領収書を残しておく必要があります。

国税庁のホームページでは、副業に係る各雑所得の金額の計算表が公開されています。

副収入があり、確定申告の必要があるという方は参考にしてみると良いでしょう。

ここまで、確定申告が必要となる会社員の副業についてみてきましたが、今回の内容は所得税法上での場合になります。市区町村に
納めている住民税については、金額にかかわらず所得がある場合には各市区町村に申告をする必要があります。

また、2カ所以上から給与を得ている場合や医療費控除の適用を受ける場合、ふるさと納税の申告などを行う場合には給与以外の所得が20万円以下であっても確定申告の必要がありますのでご注意ください。

年末調整の仕組みと罰則について

年末調整を行う理由

給与の支払い者(会社)は、毎月の給与の支払時に源泉所得税の税額表に基づいて所得税を給与から徴収しています。

しかし、

①源泉徴収税額表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして作られているが、実際は年の中途で給与の額に変動がある

②年の中途で控除対象扶養親族の数などに異動があっても、その異動後の支払分から修正するだけで、遡って各月 の源泉徴収税額を修正することとされていない

③生命保険料や地震保険料の控除などは、年末調整の際に控除することとされていること

などの理由により、毎月給与から源泉徴収している所得税の金額と給与所得者の年間の所得税額が一致しません。

そのため、年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき所得税額を正しく計算し、所得税を多く徴収している場合には還付を所得税額に足らない場合は徴収を行います。この一連の手続きを年末調整といいます。

年末調整の時期と期限

年末調整は年間の給与総額が確定した段階で行います。そのため、一般的には12月支給分の給与が確定してから年末調整を行います。

年末調整に関する源泉所得税の納付期限は、事業者が納期の特例の承認をうけていない場合は1月10日、納期の特例の承認を受けている場合は1月20日となります。

それぞれの納付期限までに年間の源泉所得税の計算・納付が完了していなければいけません。(なお、納期の特例の承認を受けるためには届出の提出が必要となります。)

年末調整の対象とならない者

原則として給与の支払いを受けている従業員(パート・アルバイトを含む)は年末調整の対象となりますが、年末調整をしない従業員もいます。

①給与の収入金額が2,000万円を超える人

②2か所以上から給与の支払いを受けている人で、他の勤務先で年末調整を行う人

③年の途中で退職した人

(ただし12月の給与支払い後退職した場合は、年末調整の対象となります。)

④「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出しない人

年末調整で受けられる控除

次に、年末調整で適用される控除についてみていきます。所得控除はいくつかありますが、今回はその中でも比較的よく使われる控除を紹介していきます。

(控除については2021年10月時点の制度を参考にしております。)

基礎控除

本人の合計所得金額が2,500万円以下である場合に本人の所得金額の合計額から48万円を限度として、所得金額に応じた金額を控除できます。

基礎控除の適用を受けるには、会社へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要です。

配偶者控除

本人(合計所得金額1,000万円以下の人に限る。)に控除対象配偶者がいる場合に、本人の所得の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合は48万円)を限度として、所得金額に応じた金額を控除できます。

配偶者特別控除

本人(合計所得金額1,000万円以下の人に限る。)が生計を一にする配偶者(合計所得金額が48万円超133万円以下の人に限る。)で配偶者控除を受けていない場合には、本人及びその配偶者の所得金額に応じた金額を控除できます。

扶養控除

本人に控除の対象となる扶養親族がいる場合は扶養控除が受けられます。扶養親族とは、本人と生計を一にする配偶者以外の親族又は児童及び老人のことをいいます。主に、生計を一にしている子供(年齢が16歳以上)や親、兄弟などが扶養親族の対象となります。

一般的な扶養親族の場合は、扶養親族一人当たり38万円の控除が受けられます。さらに、扶養親族の状況(扶養親族の年齢や同居の有無)などによって受けられる扶養控除の金額が変わってきます。

なお、所得税の場合は16歳以上の子供が扶養控除の対象となります。16歳未満の場合は扶養控除を受けることはできませんが、住民税の控除の対象とはなりますので扶養控除等(異動)申告書の「住民税に関する事項」の欄に忘れずに16歳未満の扶養親族を記入しましょう。

①特定扶養親族

扶養親族の年齢が19歳以上23歳未満の場合は控除される金額が63万円となります。

②老親扶養親族

扶養親族の年齢が70歳以上で、同居している場合は48万円、別居している場合は58万円が控除される金額となります。

障害者控除

本人、生計を一にする配偶者及び扶養親族が障害者に該当する場合は障害者控除を受けられます。障害の程度に応じて、一般の障害者は27万円、特別障害者は40万円、特別障害者で本人と同居している場合は75万円の控除が受けられます。障害者控除を受ける場合は障害者手帳などで障害の程度を確認しましょう。

また、障害者控除は扶養控除とは違い、16歳未満の子供でも適応されます。

ひとり親控除

本人がひとり親の場合には35万円の控除が受けられます。

保険料控除

本人が本年中に支払った保険料(生命保険及び介護医療保険、個人年金保険)を所得金額から控除できます。ただし、保険料控除には上限がありますのでご注意ください。

保険料控除の適用を受けるためには会社「給与所得者の保険料控除申告書」の「生命保険料控除」の欄に記入をし、「給与所得者の保険料控除申告書」と「生命保険料控除証明書」を会社に提出する必要があります。

また、配偶者や扶養親族の保険料を支払っている場合には、配偶者や扶養親族名義の保険料も控除の対象となります。

地震保険料控除

本人又は本人と生計を一にする親族が所有している家屋・家財に対し本年中に支払った地震保険を所得金額から控除できます。ただし、控除できる上限は5万円で保険の目的が家屋や家財を保険の目的としている必要があります。そのため、自動車保険や家屋・家財以外の損害保険は地震保険料控除の対象とはなりません。

地震保険料控除の適用を受けるためには「給与所得者の保険料控除申告書」の「地震保険料控除」の欄に記入をし、「給与所得者の保険料控除申告書」と「損害保険料を支払ったことを証明する書類(損害保険会社が発行)」を会社に提出する必要があります。

社会保険料控除

本人が本年中に支払った社会保険料を所得金額から控除できます。生命保険料控除や地震保険料控除とは違い、控除の上限額はなく支払った社会保険料の全額が控除の対象になります。また、本人が配偶者やその他の親族の社会保険料を支払った場合も、社会保険料控除の対象となります。

会社が社会保険に加入している場合は、会社が毎月社会保険を納めており、年末調整時に本年中に支払った社会保険料を合算して控除金額を算定します。そのため、従業員が申告書等に記載する必要はありません。

個人で国民健康保険や国民年金を支払っている場合や配偶者や扶養親族の社会保険料控除の適用を受ける場合は、本年中に支払った社会保険料を「給与所得者の保険料控除申告書」に記載して会社へ提出する必要があります。

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

よく住宅ローン控除と言われていますが、住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。本人が住宅の購入もしくはリフォーム等の増改築を行った場合に、住宅借入金等(住宅ローン)の残高に応じて所得控除が受けられます。

ただし、住宅ローン控除の控除期間や控除額の計算方法、控除限度額などは住宅を購入した年によって異なりますのでご注意ください。

住宅ローン控除の適用を受けるためには、適用を受ける初年度は本人が確定申告を行い、控除の適用を受ける2年目以降は年末調整で行うことができます。

2年目以降の住宅ローン控除の適用を受ける場合は、「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書(税務署長が発行)」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を会社へ提出する必要があります。

なお、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ納税を除く)は、年末調整では控除されないので、自分で確定申告をする必要があります。

年末調整に関する罰則

年末調整が遅れた場合

①従業員側の理由で年末調整が間に合わなかった・できなかった場合

従業員が扶養控除等(異動)申告書などを提出しないために会社側で年末調整が遅れたもしくはできなかった場合は、会社側では年末調整をせずに、従業員に自分で確定申告をしてもらうことになります。

従業員の書類の提出により年末調整が遅れた場合は、会社側に罰則等はありませんが、従業員が確定申告の申告期限(原則は翌年3月15日)までに確定申告を行わなかった場合には、その従業員に無申告加算税、延滞税が課せられる可能性があります。

(所得税の納付がある場合は、申告期間が翌年2月16日から3月15日までとなります。所得税の還付を受ける場合には翌年1月1日から5年間までならいつでも申告をして還付を受けることができます。)

②会社側の理由で年末調整が間に合わなかった場合

会社側の年末調整が遅れた場合には罰則等はありませんが、年末調整が遅れる場合には税務署へ連絡しておくことをおすすめします。

大幅に年末調整が遅れる場合には、各従業員に確定申告をしてもらう必要があります。

会社側の理由で年末調整が遅れた場合の罰則はありませんが、年末調整を行わなかった場合には会社側が罰則を受ける可能性があるので、期限に間に合わない場合でも必ず年末調整を行うようにしましょう。

年末調整を行わなかった場合

原則として、企業が年末調整を行う義務があると規定されています。

(所得税法第190条~193条)

企業側が年末調整を行わなかった場合には、

〇会社の代表者に対して10年以下の懲役または200万円以下の罰金

(もしくはこの両方)

〇会社に対して200万円以下の罰金

が課せられる可能性があります。

年末調整を行わなかった場合の罰則は会社側に課せられるもので、従業員には罰則等はありません。

以上、年末調整を行う理由や控除の内容、年末調整を行わなかった場合の罰則などについてみていきました。控除を受けられるかの判断が難しい場合もあると思います。自分が控除を受けられるか確認したい場合は経理担当者や税理士などの専門家に確認してみると良いのではないでしょうか。

(今回は、2021年10月時点の税制をもとに記事を作成しております。)

創立費と開業費の取扱い

法人として事業を始めようとするときに、法人の設立から実際に事業を開始するまでの間に法人の設立や開業準備のために様々な経費を支出することになると思います。
法人設立の登記料や登記のための手数料や事務所の家賃、事業で使う机やパソコンの購入なども開業する準備として必要となってくるでしょう。今回は、そんな事業を始めるまでの準備でかかっ た費用の会計処理の方法について紹介していきたいと思います。

法人が開業するときにかかった費用は、一般的に「創立費」と「開業費」という項目に計上されます。

まず、創立費とは「会社設立時の登記にかかる費用」のことをいいます。具体的には、印鑑の購入代、印鑑証明書の発行手数料、登記時の印紙代、定款作成のための代行手数料、定款の認証手数料などのことです。その他にも会社の設立(登記)に関わる費用は創立費に含まれます。

次に、開業費とは「会社設立後に事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」をいいます。会社を設立後、実際に事業を始めるまでに支出した費用が含まれます。具体的には、HPや広告等の宣伝費、事務用品や消耗品、事業のための交通費など開業のために支出した費用のことをいいます。

しかし、以下の①、②のものは開業費に含まれないので注意が必要です。

① 車やパソコンなどの備品で10万円以上のもの

備品等のうち、1つあたり10万円以上のものは開業費ではなく固定資産として貸借対照表上に計上して、減価償却をして費用として計上していきます。

② 毎月経常的に支払う社員の給与や水道光熱費

開業費とは、開業準備のために「特別に」支出する費用のことをいいます。そのため、開業後も毎月経常的に支出される社員の給与や水道光熱費などは開業費には含まれず、支出したときに経費として計上することになります。

創立費と開業費の具体的な違いは、創立費は法人の設立に関する支出であること、そして、開業費は会社設立後からの事業を開始するまでの支出であるという点です。

創立費は法人の設立に関する支出、一般的には法人の設立登記に関する費用のことをいいます。一方、開業費は会社設立後から事業開始までの支出とおおよその期間が定められていますが、その内容などはとくに決められていません。事業を開始するために支出した費用のうち、登記に関するもの以外は基本的にすべて開業費に含まれます。

次に、創立費と開業費の会計処理に考えていきます。

 創立費・開業費ともに、資産として貸借対照表の繰延資産の部に計上されます。会計上の償却期間は5年とされていますが、法人税法上は任意償却が可能となっています。

つまり、創立費も開業費も支出した金額の範囲内であれば、いつでも自由に償却(費用として計上)することができます。

法人の設立当初は、まだあまり利益が出ていないことも多いかと思います。法人を設立後、利益が出るようになってから創立費や開業費の償却をしても問題ありません。

基本的に法人が費用を支出したときには、支出した期に計上することが一般的ですが、開業費や創設費は繰延資産として計上でき、また償却も比較的自由にできる少し特殊な勘定科目と考えられます。そのため、創立費や開業費などを正しく計上できれば法人の節税効果も期待できます。

また、事業を開始する前の支出で創立費や開業費に含まれない費用(法人の設立前に支出した費用など)は、設立した期の経費として計上することができます。
ただし、創立費や開業費を法人の経費として計上するためには、レシートや領収書などの内容や金額等がわかる資料が必要となります。

ここまで、開業準備にかかる費用の会計処理についてみてきましたが、開業の準備中はなにかと支出も多く創立費や開業費の判断が難しかったり、また会計や経理以外にも多くの仕事があったりするかと思います。そこで、後になって開業時の創立費や開業費を繰延資産として計上しておけばよかったと後悔しないためにも、開業を考えている場合には、事前に専門家のアドバイスを聞いてみてはいかがでしょうか?

消費税にご用心2 ~消費税の納税義務~

個人事業者や法人などで商売を始めると、「売上が1千万円を越えると、消費税を払わなければいけない。」などということ聞いたことがある方は多いと思われます。

この消費税を納めなければいけない義務が「納税義務」といい、納税義務がある事業者を、「納税義務者」といいます。
この納税義務は、原則的には個人事業主の場合には事業をはじめてから2年間、法人の場合にはおおむね2事業年度(事業年度を変更している場合にはやや異なります。)については免除されています。
しかしながら、これには例外があります。

今回は消費税の納税義務の基本的な知識と、これから事業を始めたいという事業者の方や中小企業者の方にむけて、注意しなければいけない例外について大まかに説明していきます。消費税は非常に細かい話が多いので、どういうときに消費税の納税義務に注意をしなければいけないのかをお伝えできればとおもいます。

まず原則的な取り扱いを条文でみていきましょう。

消費税法5条引用(納税義務者)

事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三十条第二項及び第三十二条を除き、以下同じ。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=363AC0000000108_20180410_430AC0000000007#87

消費税法9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=363AC0000000108_20180410_430AC0000000007#87

条文の中で使われている重要な用語として、課税売上高と、基準期間があります。細かい規定はあるのですが、簡単に一言でまとめると以下のようなものになるとここでは思ってください。

課税売上高とは・・・消費税が課される売上高

基準期間・・・個人事業者の前々年、法人の前々事業年度(事業年度の期間を変更していたりすると変わります。)

法律の条文ですので読み取りづらいとは思われますが、要約すると、消費税法5条では消費税がかかるような売上取引をおこなった事業者は消費税の納税義務がありますと定め、消費税法9条では事業者の基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合には免除すると定めているわけです。

つまりこの条文の規定により、個人事業者が事業をはじめたり、会社を設立した場合には、多くの場合には2年間ほどは納税義務が免除されます。

ここまで一般的にも知られているような知識ではないかと思われます。

ただし、例外があります。消費税法9条の末尾のこの部分です。


「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

では、その例外である、別段の定めとはどんなものがあるのでしょう。

  1. 課税事業者の選択
  2. 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
  3. 相続があった場合の納税義務の免除の特例
  4. 合併があった場合の納税義務の免除の特例
  5. 分割等があった場合の納税義務の免除の特例
  6. 吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例
  7. 新設法人の納税義務の免除の特例
  8. 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例
  9. 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

こんなに沢山あります。

それぞれ簡単にではありますが、説明していきます。

1.課税事業者の選択

これは事業者が自ら選択して納税義務者となる場合をいいます。多額の仕入れや固定資産の購入や貿易取引を行う事業者は、消費税が還付される可能性が高まりますので、あえて納税義務者になることを選択する場合があります。納税義務者でない場合には、消費税は還付されません。
この規定の適用をうけた事業者は最短2年間ほど原則的には納税義務は免除されません。

またこの規定の適用をうけた期間中に、調査委対象固定資産(商品または製品などの棚卸資産以外のなどの固定資産や権利などで、一取引単価が税抜100万円以上のもの)を購入した場合には最短でも3年間ほど納税義務は免除されなくなります。

よくあるトラブル

税理士の変更や税理士との顧問契約をやめた際、課税事業者の選択をしていることを忘れていていたり、そもそも税理士とのコミュニケーション不足で知らされていなかったりして、課税事業者の選択をうけることをやめる手続きをとっておらず、消費税の納税義務の免除を受けることができなかった。

2.特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例

これは事業者の前年又はその前事業年度(前年又は前事業年度が7か月以下である場合には前々年又は前々事業年度)の開始から6ヵ月の期間の課税売上高が1千万円を超える場合に、その年または事業年度は消費税が免除をされないという規定です。

課税売上高の代わりに支払ったお給料の金額により1000万円を超えるかどうかを判定することができます。

よくあるトラブル

事業をはじめてみたら、想定以上に売上が上がっており、2年間の納税義務の免除をうけることができなくなってしまった。対象となる課税売上高を、お給料により判定することができるので、事業をはじめる段階で検証をすることで対策を講じることができる場合もあります。

3.相続があった場合の納税義務の免除の特例

 相続により事業を承継した個人事業者が、事業の承継元である故人(被相続人)の承継した事業について納税義務があることにより、その個人事業者が納税義務者となる可能性がある規定です。

4.合併があった場合の納税義務の免除の特例

 合併により事業を承継した合併法人(合併後も残る会社)が、事業の承継元である被合併法人(合併で消える会社)の承継した事業に納税義務があることにより、その合併法人が納税義務者となる可能性がある規定です。

5.分割等があった場合の納税義務の免除の特例

分割により事業を設立した新設分割子法人(分割により設立された会社)が、事業を分割した新設分割親法人(事業を分割した法人)の承継した事業に納税義務があることにより、納その新設分割子法人が税義務者となる可能性がある規定です。

6.吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例

吸収分割により事業を承継した分割承継法人(事業を吸収した会社)が、事業の承継元である分割法人(事業を承継した会社)の承継した事業に納税義務があることにより、分割承継法人が納税義務者となる可能性がある規定です。

7.新設法人の納税義務の免除の特例

  設立から2年以内の法人で、出資金や資本金額が1千万円以上となる場合には納税義務が免除されない規定です。
  またこの規定の適用をうけた期間中に、調査委対象固定資産(商品または製品などの棚卸資産以外のなどの固定資産や権利などで、一取引単価が税抜100万円以上のもの)を購入した場合には最短でも3年間ほど納税義務は免除されなくなります。

 よくあるトラブル

 豊富な自己資金1千万円を用意して事業をはじめようとしたにも関わらず、思いもよらず消費税の納税義務をおってしまった。

8.特定新規設立法人の納税義務の免除の特例

  設立から2年以内の法人で、その法人の株式の50%以上を保有する個人並びにその親族等やその個人が支配する他の法人などの基準期間相当期間(設立日や事業年度からおおよそ2年~3年前の期間)に消費税の対象となる売上取引が5億円を越える場合、その法人の納税義務は免除しないという規定。

よくあるトラブル

 新しい会社などをはじめて、2年間は納税義務が免除されるものと思っていたが、経営者の事業の経営成績がよく納税義務の免除をうけることができなくなっていた。

9.高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

 事業者が納税義務の免除されない期間に、商品製品などの棚卸資産を含み、固定資産や権利、自分で建築した建物や構築物で、一取引または一つの成果物が1千万円を超えるものを購入した場合には、その購入した日の属する年や事業年度から3年間程度は納税義務が免除されない規定です。

よくあるトラブル

 事業の開始直後に大量の仕入れや固定資産の購入で、消費税の還付をうけたら、すぐに消費税の免除を受ける予定だったが、この規定により消費税が免除されないことが後になってわかってしまい、資金繰りが厳しくなってしまった。

まとめ

消費税の納税義務が免除されない規定を列挙していきました。

事業を始めたばかりの会社や中小企業にとって特に気をつけなければいけないのは・・・

  • 課税事業者の選択
  • 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例
  • 新設法人の納税義務の免除の特例
  • 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例
  • 高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

この4つではないでしょうか。

場合によっては思わぬ納税義務あるいは納税義務者になったほうがよかったなどということが起きかねません。ご商売の状況や会社の設立時の株も保有状況などについてしっかりと相談にのってくれる税理士を探しましょう。

消費税にご用心 ~消費税の基本的な仕組み~

個人で事業をされている個人事業者や法人として会社を経営されている経営者の皆様であれば商売をしていれば消費税を支払わなければならないということをご存じではなかろうかと思います。

消費税は平成元年4月1日より導入され、大小さまざまな改正を経て、すでに30年以上が経過しています。消費税の導入の目的は、当時から予想されていた高齢化社会にそなえた財源の確保や、所得税や法人税とは異なり取引そのものに課税するため税収の確保がしやすいというものでした。当初は3%程度でしたが、今ではそれも10%となり、今後も伸びていく予想です。

消費税は税法の中でも特異な存在です。それは税の負担者は消費者の方々ですが、実際に消費税を納める納税義務者は商売をしている事業者や会社です。

つまり消費税は、消費者からお預かりした税金を事業者や会社が納税義務者として支払うことで成り立っています。

消費税はこのような特殊な背景があるため税の世界に関りのない方々が個別に税法の条文をみてもなかなか正解にたどり着けない厄介な税法です。

消費税の対象

消費税は国内における消費に対して負担を求める税金です。会社や個人の事業者などが行う商品の販売、資産の貸付、サービスの提供などで代金を支払うことに税金を課すことで、最終的に消費者が消費税を支払う仕組みになっています。

ですので、単純にお金を貸したり、物や金銭を無償で貸したり、あるいは損害賠償金などでお金をもらったりする場合には消費税は課されません。

とはいえ、大体の経済活動は消費税の対象になるのはおわかりになると思います。このように広く消費税の対象をとらえつつ、国では消費税を課税することがそぐわないものや社会的な要請に配慮して限定的に消費税を課さない取引(非課税取引)や外国との国際的なやりとりで2重の税負担とならないように消費税を免除する取引(輸出免税取引)などにより部分的に消費税をとらない又は免除することで様々な調整をとっているのが、現状の消費税という法律の成り立ちです。

仕入税額控除

消費税を負担するのは一般消費者ですべての国民ですが、それを国に納めるのは商売をしている個人事業者や法人である会社などの事業者です。商品代金に消費税を上乗せすることで、事業者が消費税を国民の消費税を預かり、代わりに国に消費税を納めます。

とはいえ、商売のすべてに消費税を課していくだけだと、消費税は膨大に膨れ上がっていきます。

このようなことを防ぐために、仕入税額控除という仕組みを取り入れて、消費者に対する税の過大な負担をしないようにしています。(税の累積性の排除)

仕入税額控除とは、事業者が売上に課された消費税から、仕入れや経費などに課された消費税部分を控除するという仕組です。

消費税法における売上・仕入

消費税法における売上と仕入は、基本的には表裏一体の関係にあります。

①売上→資産の譲渡、貸付、役務の提供

②仕入→資産の譲受け、借り受け、役務の提供を受ける

 消費税には全額控除方式、個別対応方式および簡易課税という税額計算方式があり、それぞれによって売上仕入取引の取り扱いがかなり変わってしまいます。
 法人税や所得税、それらの利益の計算をするための会計などのように画一的な区別はせず、取引ごとの態様が非常に重要です。

 消費税という税金どういうものであるか、大きな枠組みを説明させていただきました。
 消費税は細かい論点が山積しており、かつ大きな損失を受けかねない税金です。商売をされている方にとって厄介な論点ではないかと思われます。消費税について迷うことがあればぜひ税理士にご相談ください。